「神子の命、貰い受ける!!」
「はい?」
ここオサ山道は砂漠と平野をつなぐ山道である。切り立った崖の上からその声の主は現れた。それも女の子だ。
私と同じ黒髪(何でもこの辺では黒髪は珍しいとはロイド談)を後ろで大きく束ね、胸元の大きく開いた和風な着物を着ていた。見た感じディザイアンとは思えない。
「覚悟!」
「えっ? えっ? ・・・きゃっ!」
どすんっ
その岩壁から飛び降りコレットに迫る。クラトスはすでに剣を抜いたが、当のコレットはしりもちついた。
そしてレバーのようなものを倒し・・・。
「あ―――・・・・・・・・・!!」
足元が開き、哀れにもその襲撃者は行動へと落ちてしまった。
「あー! どうしよう、ねえロイド!」
「ほおっておきなさい、コレット。あなたの命を狙ってきたのよ。自業自得だわ」
「・・・まあ、ちょっとかわいそうではあったけどな」
ロイドが女暗殺者の落ちていった穴をのぞきつぶやく。うん、私も同感。悪い人には見えなかったし。
というか、見ていて切なくなる・・・!
「大丈夫だよ。あの女の人が仮に45kgだと想定して。重力加速度が9.8としても・・・」
すいません、物理はさっぱりわかりません。
・・・・・・12歳に負けた?
「・・・・・・ほおっておけ。急ぐぞ」
「あ・・・・うん」
坑道に落ちた哀れな暗殺者さんを後にして私達はパルコマスタへと急いだ。
―――――――――――――――――――
「おーっ! 海だ海だ!」
「少しは落ち着けよ、」
「落ち着いてます!」
トリエットに一番近いところにある漁港のあるイズルートの村から出された船の上。私ははしゃいだ。
クラトスが呆れたよーにため息をついたが無視する。船旅なんて始めてなんだよ、はしゃいで悪いかこのヤロウ。
「それにしても・・・あの暗殺者なんだったんだろうね」
「ディザイアン・・・・には見えなかったよなぁ・・・」
「でも良い友達になれそうだなぁ・・・」
「・・・自分を殺そうとしてる人と友達になるの?」
私がそう聞くとコレットはにこにこと笑顔で答えた。
「うん。お友達になったらわけを聞かないとね」
「・・・・・・・・・。」
ダメだ、聞いてねぇ。今更だが天然だよ、コレット。
「けどその理由をどうやって聞くんだよ?」
「あっ、そっか! ・・・じゃあ今度ロイドが考えておいてね」
「・・・俺が考えるのか?」
・・・墓穴をほったな、ロイド=アーヴィングよ(なにゆえフルネーム?)
「あ! パルコマスタが見えてきたよ」
「え! どれどれ?」
ジーニアスの指差した方には確かに今までの町や村とは比べ物にならないほど大きな港が目に入った。
―――――――――――――――――――
パルコマスタ。今までの町村とは違い活気があった。人間牧場が近くとあるというのに、この街の人はディザイアンに対して露骨な不快感と敵対心を抱いていた。何でも全てはこの街を治めるドア総督のおかげらしい。
リフィルの提案により私達はドア総督のいる屋敷へ向かった。そこには初代再生の神子スピリュリアの旅の記録、「再生の書」があり、それを見せてもらおうとのことだった。
さすが遺跡マニアと言うべきか、あの情熱は尊敬に値するよ、うん。
・・・っとまあここまでが現在の経緯。そして現在・・・。
「殴る・・・あの野郎ども殴ってやるぅぅぅっ!!」
「・・・お、落ち着きなよ・・・」
「落ち着けるか!
ちっくしょー、ニセモノってわかった謝らず5、6回蹴り上げて悶絶させてやったのにっ!!」
ハコネシア峠にいる蒐集家の元に向かってる。
ドア総督の屋敷に行く途中ガラの悪い連中にぶつかり彼らの持ち物のワインを割ってしまったのである。
それを弁償し最後までムカつく態度の彼らが去るのを見て屋敷に向かい、再生の神子と名乗ったらいきなりニセモノ扱い。
しかしコレットの羽をみて疑いは晴れた。ものすごーく腹が立ったがジーニアスの辛辣な糾弾で少しスッキリしたので許してやった。
神子のニセモノ、何ともまあ嘆かわしい。今度会ったら酷いぞ、オイ。
そしてニセモノにだまされたドアと副総督のニール曰く、彼らはハコネシア峠に行くと聞き、私達はそこへ向かってる。多分再生の書を峠にいる蒐集家に売っ払うつもりなんだろう。クルシスをも恐れぬ罰当たりだ。
そして救いの小屋について毒づいているのだ。
ああ、思い出してもハラワタが煮えくりかえる・・・・・・!!
「まったく! コレットもコレットだよ! 少しは腹が立たないの?」
「ううん、だって神子がたくさんいれば世界再生がちゃんとできるよ」
「・・・・・・いや、そーゆー問題じゃなくて・・・」
何か怒ってる自分がバカみたいに思えて、私は脱力しながら扉を開けた。
「・・・・・・あっ!」
そして目に入るのは一人の女の子。オサ山道で出会った暗殺者だ。なにやら真剣な顔をしてお祈りしている。
「・・・・ラのみんなを助けれますように・・・・」
ぽそりと聞こえた声を私は聞き逃さなかった。
・・・・・・悪い子じゃないんだよなぁ、見た感じは。話せば分かり合えるってコレットの言葉もウソじゃないかも。
「ねぇ」
私は思わず声をかける。その声にビクッ!と露骨に反応して振り返る。
「ああ! お、お前らは!!」
「・・・またお前かよ」
「くっ!」
暗殺者はお札を構える。
「あ、あの殺し屋さんですね。あの時は大丈夫でしたかぁ?」
コレットがまったく危機感を感じさせずに暗殺者に近づいた。
「う、うるさい! ここで会ったが100年目!! 覚悟しろ!」
「やめろよ」
意外にもロイドが割って入った。
「ここはお祈りする場所だ。こんな所で戦ったらいけないだろ」
おお! ロイドが立派なことを言ってる!(失礼?)
「そうですよ、・・・えと、殺し屋さん。わたし、コレットといいます。
神子としてはまだ半人前なんですけど頑張って世界を再生しますね〜」
その一言に暗殺者は大いに慌てた。
・・・何か反応がかわいいな、この子。タイプだ(何の)
「な、何を言ってるんだ! 名前なんて聞いてない! あ、あたしはお前の命を狙ってるんだぞ!?」
「知ってます。でも話せばわかり合えますよ。・・・えっと殺し屋さん?」
「しいなだ! 藤林しいな! 殺し屋と連呼するな!」
「ま、まあまあ、落ち着いて」
私は二人の間に割って入り、笑顔で言った。
「えーと、しいな? さっきロイドも言ったとおり、私達はここで戦いたくない。今日は見逃してよ」
「・・・・・・・・・」
暗殺者、もといしいなはキッと私達を見て睨んだ。
「今度会った時は容赦しないからな!」
そう言い残し、しいな煙と共にどろんっと消えてしまった。忍者か? あの子。
まあ、とにかく。この救いの小屋で一夜を明かした私達であった。
―――――――――――――――――――
「・・・あの場で正体バラしちゃえば良かったのに」
「まだ言ってるの?」
呆れたようにリフィルが肩をすくめた。
「・・・・・・だってさあ〜」
ぷーとふくれる私。ハコネシア峠に住んでる蒐集家。私達が再生の神子だと言えなかったのが不満なのだ。
再生の書を見せる条件として、スピリチュアルの像を譲るという条件にした。
救いの小屋にあるはずなのだが、どうもソダ間欠泉に落としたらしい。どうやって取るかという事でロイドが熱湯を被らないようにしないようにと言って皆を驚かせた。
そんなこんなで一旦、パルマコスタに戻り、事件は起きた。
「た、大変だ! ディザイアンの公開処刑が広場で起こってる!」
「!!」
広場には数名のディザイアンと兜を被ってない赤髪のリーダー格のディザイアンがいた。
そして持ってきたのが絞首台の前に立たされ、手を縛られた40代の女性。
どー見ても危ない光景だ!
「聞けっ、劣悪種ども! この女は我らに逆らい、資材の提供を断った!! よって・・・」
「何が提供よっ!!」
ディザイアンに一人の少女が食ってかかった。
「物が欲しかったらお金を払いなさいよ! もっともあんた達のお金なんて誰が――――っ」
ばしっ!!
赤毛のディザイアンが少女の顔を殴った。・・・はたいたのではなく、顔を殴った。
・・・最低、女の敵だ!!
「人間風情が対等の口をきくな・・・この豚がっ!」
テメーは某108人の愉快な仲間達の精鋭に18人がかりでボコられた狂皇子か!?(わかりにくいって)
「やめろぉっ!!」
「! あいつは・・・!」
ロイドが剣を抜いてその場に飛び込むように姿を見せた。
「マグニス様っ! あの赤い奴は手配ナンバー0074のロイド=アーヴィングです!」
「何ぃっ!?」
ぎろりっ! と部下を見て赤毛のディザイアン―――マグニスは傷ついた目でロイドを見やった。
「そうか・・・こいつが・・・・ガハハハハッ!
なるほど、ここでお前のエクスフィアを奪えば俺が五聖刃の長になれる」
「ふざけるなっ!返り討ちにしてやる!」
どーやらこの男、五聖刃の一人らしいが。同じ五聖刃でもフォシテスとはえらい違いだ。
フォシテスの方がまだマトモに見える。
「ロイド! わたしも戦う!」
コレットが前に出て、チャクラムを構える。
「・・・神子、それで良いのか?」
クラトスの一言にコレットはこっくりとうなずく。
「多くの人を救うためにだからって・・・目の前に奪われる命を見過ごすなんて間違ってます!!」
「そうか・・・」
クラトスはフッと微笑んだ。そして近くにいたディザイアンを斬りつける!
「ならば私は神子の意志を尊重しよう!」
「いよっ! クラトス、カッコいい〜!そうこなくっちゃね!」
クラトスが珍しく声を張り上げ、私はそれをはやし立てた。すると周りにいた人々の顔に希望が灯った。
「神子・・・?」
「おお・・・神子様が・・・!」
あとは連鎖だった。街の人々の手にはどっから出したのか棍棒や包丁を持っていた。
数はこちらの方が圧倒的に多い。マグニスの顔が怒りに震えた。
「こ、このぉ・・・! おい、その女を吊るせっ!!」
「は!」
ディザイアンが女の人を手にかけようとした、が直後。
私の真横をすり抜けたコレットのチャクラムが女の人を吊るしたロープを切った。
「ナイス! コレット!!」
私はその女の人を救出すべく、勢いよく走った。
「どおりゃあああっ!!」
ごがぁっ!!
まとめてその場にディザイアンに向けてドロップキック。
エクスフィアで運動能力が増幅されているので威力はおして知るべし。
三人まとめて吹っ飛びました。てへ、やり過ぎたかな?(かわい子ぶるな)
「おのれぇっ・・・!」
忌々しそうに見回すマグニス。周りは敵だらけだ。
「退け、マグニス」
「ぐぬぬ・・・、ちっ、引き上げだ!!」
マグニスがそう言うとディザイアンは消えて、タイミング良く汽笛が聞こえてきた。
―――――――――――――――――――
「お母さん!」
「ショコラ!」
マグニスに食って掛かった少女、ショコラはつるされた女性に駆け寄り抱き合った。
そして振り返り笑顔で言った。
「ありがとうございます・・・神子様。お母さまで殺されたら私、どうなっていたことか・・・」
「え?」
「私・・・カカオといいます。私の夫はディザイアンと戦って死に、私の母もどこかの牧場へ・・・」
カカオが顔をひそめて言う。
「奴らは悪魔よ!!」
ショコラは叫ぶように言った。
「マーテル様は眠っているだけで何もしてくれない! お祖母ちゃんが殺されたら・・・!!」
「ショコラ! 神子様の前で!!」
「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」
ショコラはしゅんとなって、それにコレットは優しく微笑んだ。
「大丈夫、わたしがきっと旅を成功させてディザイアンを封印するから・・・」
ショコラはうなずいた。
「総督! ドア総督!!」
誰かがその名を呼ぶと歓声が起こった。一度会ったことがある。
そう、私達を以前ニセモノ扱いした(トゲトゲしい口調)パルコマスタの長である。妻であるクララは数年前に他界し、娘のキリアが唯一の肉親というある意味哀れな人だ。
「おお、神子様! いや、ありがとうございます。怪我人もいなくて安心しました」
「そうなの? 良かった・・・」
私は安堵した。ディザイアンが変なことをしていないか不安だったのだ。
「総督府で詳しいお話を・・・さあどうぞ」
ドアの総督府へ行くのは二回目だった。他の建物より大きい。
ドアに続いて娘のキリアが入り私たちも中に入った。
「しかし・・・・どうするのだ?」
「何が?」
クラトスの言葉に私は聞き返した。
「ディザイアンの報復だ」
私はああ、と妙に納得した。あの気性の荒そうなマグニスがここをほおっておくわけにもいかないだろう。
それにパルマコスタには義勇軍がいる。それをディザイアンはほおってはおかないだろう。
「ロイド、どうするのだ? ここをイセリアの二の舞にさせぬよう・・・考えているのか?」
「クラトス!!」
「・・・・考えてるさ」
私の声をさえぎり、ロイドが静かに言った。
「もう・・・もう二度とあんなことはさせねぇ! 牧場ごとディザイアンをぶっ潰してやる!!」
「・・・そう言うと思ったわ」
やれやれとリフィルが肩をすくめた。
「コレット、どうするの?この旅の最終決定権はあなたにあるのよ」
「わたしは・・・ロイドの言うとおりだと思う」
「決定だね、姉さん」
ジーニアスが茶化すように言った。
「でしたら・・・今日はもう休んではどうです?どうか一晩この街で休んで出発は明日に。
宿はこちらでご用意します」
このドアの好意に私たちは二つ返事で返答した。
―――――――――――――――――――
「休むって言ってもまだ日は高いよねぇ」
さんさんと照りつける太陽を見る。もちろん直視なんて愚かなマネはしない。
太陽の高度は高く、とてもじゃないが眠る時間じゃない。
「そういえば・・・ジーニアスってここの学校に入る予定だったんだよね」
犬をなでながらコレットが思い出したかのように言った。
「そーなの?」
「うん、推薦をもらったんだけどちょっと事情があって・・・」
何か顔が暗い。何かあったのかな?
「じゃあさ、行ってみようよ、学校」
「え?」
「もしかしたらそこに通ってたかもしれないんだから。興味ないってわけじゃないでしょ?」
私がそう言うとジーニアスは悩むように腕を組んだ。
「うーん・・・じゃあ行ってみようかな」
そして私達は学校へ向かった。意外にもリフィルとクラトスも着いて来た。
・・・まあ二人はコレットの護衛だから仕方ないんだけど。
・・・・・おとーさんとおかーさんを連れてきたみたいだなぁ。
まあそんなこと言ったらリフィルに頭を殴られるのだろうけど。
クラトスは・・・・・・・・どうだろ?微妙だ。想像できん。
―――――――――――――――――――
「人は些細なきっかけで争う簡単に争う愚かな種族である」
淡々と。語りかけるのでもなく、私は虚ろな空間に向かって言った。
「だがこの場合、エルフにもハーフエルフにも当てはまると私は結論する。
二つの価値観は衝突し互いを傷つける、つまらない自尊心のために」
私は首を横に振り苦悩した。
「この終らない・・・メビウスの輪のような争いをやめる方法が一つだけある」
私はキッと視線を鋭くして、拳を振り上げ高らかに言い放つ。
「そう! 妥協する!! 一歩後に引いて相手を見る!互いの事を理解すべく努力する!!
そうすれば争いなどなくなる!!大体、知識をひけらかし、争いの道具にしようなど――――」
高らかに語る私を、リフィルの絶対零度の視線が射抜いた。彼女の目は、氷河よりもきっと冷たいだろう。
「・・・・・つまり。あなたはテストを受けるのが嫌だと。そう言いたいの?」
「平たく率直にわかりやすく言うとそうなるであります、先生!」
「・・・・・・・・・・・・・・・続けなさい」
「・・・・・・了承しました、先生」
ガタッとイスに座りなおす。
・・・くっ! マジメな事を言ってテストをやめよう作戦は見事失敗したであります、先生!(おいおい)
仕方なしに嫌々とテストを受ける私。
ああイヤだ。歴史は良しとする。
クラトスとリフィルに聞きまくったので細かいところはわからないが基本としては完璧。
問題は数学と理科。かなり前にやった問題で覚えてない。いや見た事はあるんだけどわかんねぇ。
あ。状況説明がまだだった。テストを受けてる、はい以上。何か質問は?
・・・はい、ごめんなさい。話を簡略化しすぎました、もうしません。
話は数時間前にさかのぼる。
この学校に来た途端にナマイキなガキ・・・いえいえ生徒さんにからまれてしまって。
そんなジーニアスの頭のよさを、つまりは学力を確かめるためにテストを受けているのだ。とばっちりで私も。
あうう〜勉強キライ!
カリカリと用紙に書くこと数分。終った・・・真っ白に燃え尽きたよジョー(誰だ)
「では発表する・・・」
・・・ああ、もう点数発表?
・・・発表するよね、そりゃ。勝負なんだから・・・フッ(あきらめた笑い)
「まず最下位の発表・・・」
あーあ、多分私だな。ヤだなぁ・・・。
「ロイド=アーヴィング、25点!」
・・・・・・・・・・・・・はい?
に、にじゅーごてん? これ国数理社の400点満点だぞ!
・・・平均して、・・・・・・・6点。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜだろう。目が熱い。涙が出ちゃうよ、女の子だもん(だから何だ)
「わー! すごいね、ロイド。今までの最高点だよ」
コレットが自分の事のように喜ぶ。ロイドは照れて頭をかいた。
・・・・・・もはや何も言うまい。
「次に168点! コレット=ブルーネル210点!」
「え? これ、100点満点じゃないのか?」
「・・・400点満点だよ」
どーやらテストの配点に気付いてなかったロイドにジーニアスが冷淡に言う。
・・・あ、何か先生からすさまじいオーラが。あのクラトスがビビってる。
つーかむしろ・・・暗いとゆーか落ち込んでる?何でだ?
「クラトス=アウリオン、398点!」
やっぱ頭がいいなクラトスって。しかし無反応。ふと視線が合って慌てて目をそらした。
するとロイドに視線がいく。
・・・・おいコラ待てやオッサン(←何か危険なものを感じ取ったらしい)
「リフィル=セイジ、400点!」
「・・・先生が満点なのは当たり前だろ」
ごもっともで。
「そして・・・・・・」
残るはジーニアスとからんできた生徒クン。
「・・・ジーニアス=セイジ、400点満点で君の勝ちだ」
笑みを浮かべながら教授らしき人が言い渡す。
かくしてテスト対決という不毛な争い(まだ言うか)はジーニアスの完全勝利という形で幕を閉じた。
―――――――――――――――――――
「えっと、アップルグミにオレンジグミ・・・あとライフボトルと・・・」
「なあ、まだ買うのかぁ?」
雑貨屋パルマツールズの店内でロイドがうんざりと言った。
ロイドと私がテストの結果で最下位と下から二番目だったので、悲しくもアイテム調達係にリフィルに任命されたのだ。別名単なる使いっぱしりとも言う。
グチるロイドに私はきっと睨んだ。
「しょーがないでしょーが。いつ襲撃されてもおかしくないんだから。準備はきちんとしとかないと」
リフィルに渡されたメモを見ながら見返す。ロイドは荷物もち。私も持ってるけどロイドほどじゃない。
そんなワケで嫌がる気持ちはわからんでもない。
「あ、あとはー・・・ってこれは?」
どこかで見た事のあるラベルの貼られたビンを見て、私はそれを手に取った。
「ああ、それはパルマコスタ名産のワインなんです。口当たりが良くておいしいですよ」
カカオさんが丁寧に解説してくれる。
・・・ほほお、ワイン。酒か・・・・・・。私は横目でロイドを見た。あくびをして退屈そうだ。
「ロイド、先に宿戻って良いよ」
「え? いいのか?」
「うん、いいよ」
「んじゃ・・・」
ガチャッ、と扉を開けてロイドは宿屋に戻っていった。
ふふふっ・・・。
「あの・・・そのワインをいただけますか?」
「え? でも未成年じゃ・・・」
「いやあ、実はリフィルから極秘で買ってこいと頼まれまして」
嘘八百を並べます。ついでにこの世界、未成年はお酒飲んじゃいけないのか、やっぱり。
「そうですか・・・ではどうぞ。1000ガルドです」
う、ちと高い。サイフには少ないガルド通貨・・・ああ横領するか!?(犯罪です)
ああ・・・でもでも!!(苦悩)
「・・・あ、でもあなたは命の恩人ですし・・・よろしければどうぞ」
「え!? いいんですか?」
「はい、構いません」
やった! カカオさん、あなたはマーテルよりも女神のようです!!
「ありがとうございます♪」
パルマコスタワインを手に入れた!ちゃっちゃらちゃちゃ〜♪
ふっふっふっ、今度こっそり飲もっと!!
は「酒飲み」の称号を手に入れた!!
「未成年の飲酒は法律で禁止されています。
良い子も悪い子も普通の子も真似しちゃいけませんよ?」
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