起きたら聖堂で、シルヴァラントとゆー世界にいて、ロイドとコレットとジーニアスの3人とディザイアンと戦って、ヤバイ所を年齢不明の美形傭兵に助けられて、神託とやらを生で見たりなんかして、いろいろ会った。本当ッに色々あった。
私は現在、ロイドの養父のダイクさんの家にいる。
世界再生の旅に連れてってもらおうとロイドとジーニアスは奮闘中だ。
「・・・・連れてってくれるのかねぇ。・・・あの鉄仮面」
鉄仮面、と言うのは私が勝手につけたクラトスのあだ名だ。彼はあんまり感情の起伏がない。
フッと笑ったりするのは見たが、それは一瞬のこと。本当に笑ったか? と聞かれても確証はない。
「好きにさせてやんな。そのうちあきらめるだろうよ」
ダイクさんが真っ赤になった鉄の剣を火バサミで確認しながら野太い声で言う。
ロイドの義理の父親で、ロイドにドワーフの誓いとやらを教え込んだ張本人である。行くあてのない私にロイドが困っている人を見たら助けよう、とか何とか言ってくれたのもひとえに彼の人徳と教育の賜物だと思う。
そしてダイクさんはドワーフらしい。ドワーフとは手先が器用で鍛冶仕事を主とする力の強い種族だ。
背は私より同じか、さらに小さいのだが体格は堂々としている。
この2人の好意に甘え、私はお世話になることにした。ついでに服も借りた。
Tシャツにジーパンの修学旅行のお泊りルックはあらゆる意味で目立つ。
・・・・ま、靴はスニーカーをはいているので、このまんまでいいかな、と。
そして現在、ただお世話になるのもどうかと思ったので夕飯を作っている。
・・・野菜を切るだけなんだが。
・・・・ちくしょう! どうしてこの世界にはコンソメスープの元がないんだあああっ!
そうすりゃ何か作れるのに!!
「・・・ただいまぁ〜!」
「帰ったみたいだな」
「おかえり。で?どうだった?」
私のセリフにロイドはうっ、とつまった。
「やっぱダメか」
「やっぱりなんて言うなよ!」
「あはは! ゴメンゴメン」
「くうぅ〜〜ん」
「あ、ノイシュ」
扉の陰から犬と狐を足して2で割った、人を乗せれるほどの大きさの動物がいた。ノイシュ、とロイドは呼んでいる。
「エサやってくれないか? 俺はちょっと親父に話があるんだ」
「りょーかい」
私はノイシュ、と書かれた皿に生肉を持って外に出る。
「はい、ノイシュ。ご飯だよー」
それに飛びつく勢いで食べるノイシュ。私はそれをしゃがんで眺めていた。ノイシュが私を警戒する様子はない。
ノイシュは人に懐きにくいのだが、私はあっさりと触ることができた。
・・・何でだろ? ま、ノイシュに触れるのは嬉しいけど。
「バカ野郎ッ!!」
どがっ!!
「な、何・・・・?」
ひたすら痛そうな音がして、さらに何かが吹っ飛ばされた音がした。
じゅ、寿命が縮む・・・・。
私はそっ・・・と扉から家の中をのぞいた。殴られたのは言うまでもなくロイド。目の周りがアザになってかなり痛そうだ。
・・・・あ、ノイシュもなんか怯えてる。
「・・・・っ! 確かに約束を破ったのは悪かったよっ! でも殴ることはないだろ!!」
「うるせぇ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
予想通りというか、何と言うか。私はこの場をいさめるべく、家の中に入った。
「ま、まあまあ落ち着いてください」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ロイド、一体何したの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
しかしロイドは答えない。こりゃ重症だ。
「とにかく! 落ち着きなさい。じゃないと話せることも話せないから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ったく、世話の焼ける・・・・。
「・・・・・あれ?」
何だろ?何やらキラキラ光るものがテーブルにおいてある。青い宝石・・・か?
「あ、それ? そのエクスフィアってのだろ?」
「はい?」
何のことだろう、私は首をかしげた。
「違うのか?のズボンのポケットに入ってたぜ」
私はじっ、とそのエクスフィあと呼ばれた宝石を見た。何の変哲もないただの宝石に見える。
「ねぇ、ロイド。エクスフィアって何?」
「えっ?あー、うーんと・・・・。」
私はロイドのたどたどしい説明を聞いた。まとめてみると、こんなカンジ。
まあ、このエクスフィアを装着すると強くなるということだろう、わかりやすく言えば。
ちなみにロイドも付けているらしく、これを装備するには要の紋というのが必要で、ロイドはそれを作ってくれるようダイクさんに頼んだようだ。その過程でロイドはダイクさんの約束を破り殴られたと。つまりはそーゆーことらしい。
「なるほど・・・要の紋ね」
「ああ、付けないと身体に毒なんだよ」
「・・・・・あのダイクさん」
「・・・みなまで言うんじゃねぇ。・・・ついでに嬢ちゃん、アンタのもな」
え・・・・?
「い、いいんですか?」
「はっ! 構わねえよ。1個作るのも2個作るのも同じだ。最近・・・この辺も物騒だしな」
も、もしかしなくても私ってついてる!?
こーして。私はエクスフィアというアイテムを手に入れたのだった。
―――――――――――――――――――
「ロイドー」
夕方。お客様である。
・・・あ、いや。私も一応客なんだが。
やってきたのは4人。コレットとジーニアス、そして護衛のクラトスとジーニアスに良く似た雰囲気の女性。おそらく彼女がリフィルだろう。聖堂で高笑いしてた。
しかしそんな風にはとても見えない。理知的で冷たい美しさを持つ女性だ。
「いらっしゃい。えっと、初めまして。あなたがリフィル先生ですね」
そう言うとリフィルは警戒を解いて、穏やかに微笑んだ。
「ええ、そうよ。あなたがね? コレットとジーニアスから話は聞いたわ」
「はぁ・・・・・・」
私は思わず苦笑した。とりあえずはただの行き倒れだと思われているのだろう。
ああ・・・、何かクラトスがこっち見てるぅぅ〜、突き刺さる視線が痛いです、ハイ。
アヤシイ女って思われてんのかなぁ?
それはともかく、話があると彼コレットはロイドのいるベランダへ向かった。
・・・・・・・・・・・フフフフ(怪しいぞ)
私は階段を上がって耳に意識を集中する。デバガメだとかヤジウマだとか言う下心からではない。
ただ友人(強調)として見届けたいだけなのだ。決して下心からではないことを信じていただきたい。
そう! 私はロイドとコレットの友人として見届ける義務があるのだっ!!(本当かよとつっこんだ無粋な輩はその場でアクロバットしてみせろやっっ!!)
とゆーわけでコソコソと極力、音を出さずに2階に上る。話し声が聞こえる。
言うまでもなくロイドとコレット。何だかしんみりとしている。
「俺も再生の旅に連れてってくれないか?」
真剣な声でロイドはコレットに言った。夕方なので空気は冷たく、ここからは暗くなった空がわずかに見えた。
「・・・何かあったの? ロイド」
決意を込めたロイドに気付いたのか、コレットは聞いた。
「俺の母さんはさ、・・・俺が3つの時に死んだんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私はこの事を知っていた。ジーニアスと、ダイクさんから聞いた。ダイクさんが養父ということはイセリアでも有名らしく、嫌でも耳に入った。
ロイドは苦しそうに続ける。
「事故で死んだんだって聞かされたけど・・・本当はディザイアンに殺されたんだ」
「・・・・・っ!」
コレットが大きく息を呑む。そして私も。
「母さんが死ぬ間際に親父にそういったんだ。俺のエクスフィアはさ、特別製で・・・・・。
これを奪おうとしたディザイアンに殺されたんだ・・・」
重い空気が辺りを包む。
「・・・・俺は、許せないよ。
村のためと言っても・・・母さんを殺したディザイアンと手を結んでいるこの村には・・・いたくはないんだ」
「ロイド・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私はこれ以上聞いちゃいけない。黙って階段を下りて、外に出た。
風が、冷たい。
「・・・・・・・・・・・・」
ふと視界に入ったそれ。お墓だ。近づいて刻まれた文字を読み上げる。
「アンナ=アーヴィング、ここに眠る・・・」
墓は大分年月が立っているはずだが、綺麗に磨かれている。ロイドかダイクさんがしたのだろう、花がそえてあった。
「・・・誰かいるのか?」
「おぅわあっ!!」
びくぅっ! と私は露骨なまでに反応した。
し、心臓に悪い・・・。この声はもしかしなくとも・・・・。
「ク、クラトスか・・・、おどかないでよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「で? どうしたのさ、こんな所で。」
「・・・・いや」
「わんっ!」
「は?」
クラトスが説明しようとすると、後からクラトスが押し倒された。いや押し倒されかけた(そこっ、変な想像しないっ!)
「くぅ〜ん・・・・。」
ノイシュだ。なぜかノイシュがクラトスに懐いている。
・・・人に懐きにくいってのは嘘だろ、オイ。
「じゃあ・・・さよなら、ロイド」
あ、どーやらコレットが帰るみたいだ。クラトスは玄関の前に行く。玄関からはコレットとリフィルさん、そしてジーニアス。
「じゃ、明日ね」
軽く笑みを浮かべ私は言った。コレットは少し驚いたような顔をして、ぎこちなく笑った。
何だか元気がない。何かあったのだろうか?
ふと空を見上げると、星がいくつも瞬いた。
―――――――――――――――――――
朝。今日はなぜか早く目が覚めた。
手の甲にはエクスフィア+要の紋。昨日、ダイクさんからもらったものだ。身支度は済ませた。
旅支度は完璧!(←ついていく気満々)さあ、いざ行かん!!(ハリキリすぎ?)
「ロイド、っ!」
この声・・・ジーニアス?
「ジーニアス?どしたの、こんな朝早く」
ジーニアスは息荒く言った。
「何してるの!? コレット達が出発しちゃうよ!!」
「えっ!? 出発は昼過ぎじゃ・・・ってンなこといってる場合ぢゃない! ロイドッ!!」
「聞こえてるっ!」
声が返ってきて、それからしばらくドタバタとロイドがいつもの格好で下りてきたっ!
そこへ、ダイクさんが立ちふさがった。
「親父・・・・」
なにやら要の紋らしきものを手渡し、ダイクさんはふっと笑った。
「持ってけ」
そしてリュックを渡す。使い込まれた丈夫そうなリュックだ。ダイクさんは笑みを浮かべて言った。
「お前のやることなんざ、お見通しだ。それとこれもな」
さらに二振り剣を渡す。本物の剣。キラリと刃が光る。
「嬢ちゃんにもな」
私もポンッと渡されたのは大降りのナイフだ。
「えっ? 私もですか!?」
「・・・・このバカ息子のこと、頼んだぜ?」
「・・・・はい! 行こう、ロイド!」
「ああ!」
ロイドは力強くうなずいた。
少し家から離れたところでダイクさんが言った。
「ロイド、ドワーフの誓い7番! 正義と愛は必ず勝つ! 忘れるなよ!!」
「だっせーな! でもわかってるって!!」
ださい、と言いつつその割には嬉しそうなロイド。私は声を張り上げて言った。
「急ごうっ!」
「ああっ!」
―――――――――――――――――――
待ち合わせ場所にコレット達はいなかった。
私はてっきりクラトスが「時間の無駄だ」とか何とか言って私達を置いって行ったんだと思ったんだが。
・・・違うらしい。コレットが待たなくていいと言ったことに、私は少なからず驚愕を覚えた。
ロイドはコレットのお父さん、フランクさんから手紙を受け取るとそれを読んだ。
・・・ロイドの目が走るごとに、手が震えていくことがわかった。あまり喜べるような内容でないことが容易にわかる。
「何だよ・・・これ・・・・。まるで遺書じゃないか!!」
・・・・は? 遺書? あの元気そうなコレットが?
正直言ってそんな図は想像できない。私と大して年の変わらないコレットが、そんなものを書く。
・・・・それが神子と言う称号なのだろう。イヤな仕事だ、神子。
「ロイド、ジーニアス。もうコレット、いや神子様はもう・・・・」
ずごおおおおおっん!!
轟音。悲鳴。2つの胎教に明らかに悪そうな二重奏。
『ロイド=アーヴィング!出て来い!!』
・・・キーン・・・・
「み、耳が・・・・」
鼓膜がキーンとする。まるでスピーカーで拡声したような・・・・。
だっ!
ロイドとジーニアスは急いで外に出た。
「ま、待って!」
キーンとする耳を押さえ、よろよろと家から出る。
目に入ったのは、炎。
紅蓮の炎が、火の粉を巻き上げ、木を建物を・・・人を焼いていた。
女子供の叫び声、燃えて火の粉のはぜる音のステレオ。
聞きたくない・・・、見たくないっ!!
それでも私は立ちくらみをこらえて、声の聞こえた方へと向かった。
正門、そこには思ったよりも人が集まっていた。
ディザイアンなのだろう、この前聖堂で見た奴らがいた。ただし兜は被っていない。
若い隻眼の男だ。浅葱色の髪に、片腕は肘まで覆うような、銃(?)が付いている。
「お前がロイド=アーヴィングか?」
「人に名前を尋ねる前にまず自分が名乗りやがれ。ディザイアン!!」
その言葉に男はフッと余裕の笑みすら浮かべた。
「いいだろうっ・・・聞けぃっ、劣悪種ども! 我が名はフォシテス! 五聖刃の一人にしてこのイセリア牧場の長っ!!」
男―――フォシテスの言葉に、悲鳴が波紋のように広がる。平静を保っていられるのは多分私だけだろう。
だって五聖刃なんて知らないし(オイ)
「ロイド=アーヴィング! 貴様は不可侵契約を破り、我らが同士を傷を負わせるという暴行に出た!
よって貴様とこの村に制裁を与える!」
不可侵契約。始めて聞く単語だったが大体の意味はわかった。
「先に約束破ったのはお前らだろ!? 聖堂で神子の命を狙ったのはどこのどいつだよ!!」
「我々が神子を・・・?」
フィシテスは眉をひそめた。この様子、思い当たるフシがないように見える。
ウソをついて、誤魔化しているようにも見えない。
「・・・なるほど、奴らが神子を狙っていると言うのか・・・」
奴ら? あのボータとかいうディザイアンのことか?
「奴らって何だよ!? コレットたちを襲った連中とお前らは違うとでも言うつもりか!!」
フォシテスはそれに答えなかった、当然か。
「まあ、いい。貴様が牧場に侵入したことは事実。その報いを受けてもらおう」
・・・来るかっ!?
早速ダイクさんにもらったナイフを使う時が来たようだ。私は鞘からナイフを取り出す。
しかし戦うのはディザイアンではなかった。
どすんっ・・どすんっ・・・
正門からそれは姿を見せた。一言で言うなら化け物。全身は緑で顔のようなものがあったが判別は出来ない。何か違和感を感じた。
「・・・何これ・・・?」
唖然としてロイドとジーニアスに近寄った。近くで見ると迫力がある。
・・・・・あ、あんまり直視したくないな、オイ!
カツンッ
ジーニアスの剣玉の音が聞こえた。
「燃えろっ、ファイヤーボール!」
ぼおおっ
赤い炎の球が化け物にクリーンヒット! その間にロイドが間合いを詰めて、一気に駆け抜ける!
「うおっと!」
ぶぅんっ!
鋭い爪を持った腕が、私に向かって薙ぎ払われた。予想はしてたので大きく跳躍して避ける。
遅い、相手の動きが良く見える。頭より身体が先に動いた。
ざくっ!
私のナイフが化け物の腕に深く突き刺さった。形容しがたい肉を貫く感触がナイフ越しに伝わる。
私はその感触に眉をひそめ、叫ぶ。
「ロイド!!」
「ああっ!!」
一気に距離を詰めたロイドの剣が一戦する。私はナイフを化け物の体から抜き取り、後ろへと下がった。
ぼたぼたと、赤い私の身体を流れる血と同じ色をしたものがしたたる。
化け物は断末魔の悲鳴を上げて、どうぅ! と倒れた。
「全然制裁になっちゃいないぜ、ディザイアン!!」
双剣についた血を払い、高らかに言うロイド。
しかしフォシテスの耳にはそんなことは届いていないのか、ロイドの手、いやエクスフィアに凝視している。
「それは・・・エンジェルス計画のものか!? 小僧っ、それをよこせ!!」
「!? これはお前らに殺された母さんの形見だ!!」
フォシテスはまた眉をひそめ、ロイドに近づこうとした。
「何を言っている? お前の母親は―――――」
その言葉は続かなかった。なんと驚いたことに倒したはずの化け物がフォシテスに襲い掛かり締め上げている。
『・・・げ・・て・・・』
「な・・・っ!?」
喋った!? いや、それよりもこれは・・・!?
『逃げ・・て・・・お、ね・・・・がい・・・・』
途切れ途切れに聞こえる声。女の、年をとった女の人の声。苦しそうに何かに逆らうようにい言う。
まさか・・・・!?
「放せ! この出来損ないがっ!!」
「・・・・めて」
頭に広がる嫌な予感。私は首を横に振る。
「やめてよ・・・・・」
『離れて・・・ロイド、ジーニアス・・・・』
「ま、マーブルさん・・・?」
それは、元は人の顔だったのだろう、笑っていたんだ。優しく。
そして――――――――爆音。
じゅぅっと飛び散った体液が肌を焦がした。私は、動けなかった。傷は大した事なかったのですぐに治った。
マーブルと呼ばれた女性だったそれの姿はない。
いるのは重傷を負ったフォシテスだけ。
「おのれ・・・! ロイド=アーヴィングよ! 覚えておけ、そのエクスフィアがある限り貴様は我々に狙われ続ける!
そのことを胸に良く刻み込んでおけ!!」
フォシテスは部下に身体を支えられ、姿を消した。
「・・・マーブルさん」
ふと見るとジーニアスが肩を震わせている。足元に転がった青い玉、エクスフィアを抱きしめるように握って。
おそらくロイドの持っているもう一つの要の紋は、彼女を助けるためのものだったのだろう。私はジーニアスとロイドの二人の顔を見た。痛々しい表情と後悔。何と言っていいかわからないが、それでも声をかけようとした
「ロイド!!」
怒りをにじませた声が響いた。村人だ。
「どうしてくれるのだ! この惨状をっ!! 牧場にはあれほど近づくなと言っただろう!?」
「ごめん・・・なさい・・・・」
子供のように謝るロイド。ジーニアスをかばって浴びた体液の火傷が痛々しい。
「謝ってすむ問題ではない! お前のいる限り村に平和はない。出ていってもらおう」
それは予想されていた一言だった。
顔は痛みをこらえているようで、どれだけ心が傷ついているか・・・私は容易に想像できた。
「ロイドは悪くないよ! ただマーブルさんを助けようとして・・・」
「理由など関係ない。ほおっておけばよかったのだ」
その言葉にジーニアスは弾かれたように反論した。
「そんな! じゃああの人たちは死んでもいいって言うの!?」
「ああ、そうだよ!!」
村人の一人が噛みつかんばかりの勢いで叫んだ。
「何もしなければ死ぬのはそいつらだけですんだのよ!
どこから来たようなわからないような奴らのために、どうしてあたし達だけが焼かれて殺されなきゃいけないんだい!?」
「―――っ!ふざけんなっ!!」
その一言に私の中の何かがキレた。
「人の命を何だと思ってるんだっ!? さっきから聞いていれば勝手なことばかり!!
どうして殺されるか? そんなの私が知るか! 加害者のディザイアンに聞け!!
人の命を犠牲にして生きているお前らに、この二人を糾弾する権利なんてない!!」
「、いいんだ・・・・」
「っ!
良くないっ!!」
弾かれたように私は叫んだ。こんなのってない。変だよ、おかしいよ。
「村長・・・こんな子供にそんな厳しくしなくても・・・」
おずおずと村人の一人が言った。その一言に希望が灯った。・・・だがそれは一瞬だった。
「関係あるものか! こいつはもともと村の人間じゃない!」
それを合図として次々にそうだ、そうだと声が上がる。ジーニアスはそれを見てつぶやいた。
「・・・・人間なんて、汚い」
それを見て私は拳を握り締めた。
私は無力だ。何も・・・何もできない。
「ロイドは悪くない! 牧場に誘ったのはボクだ! だからボクが悪いんだ!!」
「いいだろう」
村人――いや村長が声を張り上げた。
「村長権限でここに宣言する。ただいまを持ってこの二人をイセリア村から追放処分とする!!」
そして、ロイドとジーニアスに向かって村人は出て行け、出て行け、と繰り返し叫んだ。
そして気がすむとそれぞれの家々に帰っていった。
「・・・・悪かったな、ジーニアス」
「ロイド・・・・・」
ジーニアスが今にも泣きそうな目でロイドを見る。
「本当にすまないと思うなら・・・・」
唯一残った村人のファイドラさんがこちらに歩み出た。
「どうか神子様を追いかけて守ってやっておくれ。旅が成功して世界が再生されれば皆の気持ちも変わるじゃろう」
「ああ、償いはする」
「ボクも行くからね」
ジーニアスは決意を込めた声で言った。
「止めても無駄だからね・・・、ずっとついていくから・・・」
「私も行く!!」
私もロイドに向かって決意を込めて言った。
「私も行くよ? 二人だけじゃ心配だし・・・それに・・・」
一番肝心なときに、何もできなかったから。
これは声に出さず、のどの奥に押し止めておく。ロイドはため息をついて私とジーニアスを見た。
「そのエクスフィアはジーニアス、お前が使えよ。使い方はゆっくり説明してやる。・・・長い旅になるんだ」
ぴゅうっ
ロイドが口笛を吹くと、門からノイシュが現れた。
私はフランクさんとファイドラさんに軽く会釈をして三人でノイシュにまたがった。
――長い旅になる。
ロイドのその言葉が、私の頭の中でいつまでも響いた。
クラトスは「鉄仮面」の称号を手に入れた!!
「感情の変化に乏しい顔、抑揚のない声。
人はそれを鉄仮面と呼ぶ(かもしれない)」
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