レアバードを近くの陸地に不時着させた私達は、歩きながら今までの経緯を確認した。
「コレットー。あんのマッドサイエンティストで、自分の間違いに永遠に気付かず、悔い改める事をまったくしそうにないジジイ、何で誘拐されたか知ってる?」
散々な言い様である。しかし訂正する気にはならん。と言うか、みんな誰もつっこまない所がいいな。

「魔導砲に、クルシスの輝石が必要だったんだけど・・・わたしのじゃダメなんだって」
魔導砲・・・って、確かハイマで聞いたヤツじゃなかったかな。
トールハンマー・・・と某傭兵は言っていたなぁ(遠い目)

「なるほど・・・あ、ごめん。コレット、言い忘れてた」
「?」
私は手を広げ、にっこりと満面の笑みを浮かべる。

「おかえり、コレット」
それに、コレットはびっくりした顔になるが、やがて私と同じく笑顔になる。

「うん、ただいま! !」
「コレットさん・・・本当によかったです・・・」
「あ」
プレセアがそう呟くと、その顔に変化が現れた。こんな言い方は、ちょっと失礼かもしれない。
でも、プレセアにとっては多大な変化。笑っている。最初に見た悲しい顔じゃなくて、ちゃんとした喜びによる笑顔。

「・・・うん、本当に、プレセアちゃん、ありがとう」
コレットも同じく満面の笑み。
関係ないが、私のお隣のジーニアス君が顔を真っ赤にしてぽーっとしていたことを追記しておこう。

「さてと。これからどーしよっか」
「決まってるだろ! 世界を二つに切り離すんだ!!」
独り言ちたそれに、ロイドが意気揚々と高らかに言う。それは宣言するといった方が正しいかもしれない。

「って、ことは・・・精霊と契約するってコトね。じゃ、まずはどこから行く?」
「じゃあ、ノームがいいよ。ここから近いし」
うし、じゃあ目的地決定だ。

「待っててねー、精霊さん!」
私は、晴れた青空に向かって、大きく背伸びしながら言った。




―――――――――――――――――――




「おかわり」
「うむ」
私が皿を差し出すと、リーガルがそれを受け取って、ごはんをよそう。

「あ、俺もー!」
ロイドも挙手し、私はカレーライスの乗ったお皿を受け取る。
地の遺跡の中。なぜか私達はカレーパーティーをしていた。
何とも言えないスパイシーな香りが、洞窟に似た場所に漂う。ここに腹を空かせた冒険者でもいたら、よだれを出す事間違いない、食欲をそそる臭いだ。

「ひはひはひゃー、ひーはふはほんはひょーひひょーふひゃんふぇ」
意外だなー、リーガルがこんな料理上手なんて、とロイドは言っている。
「ものを食べながら喋るな」
上品にどっかの貴族みたいにカレーを食べるゼクンドゥスが、露骨に嫌そうにロイドを見る。その料理の腕は最初は一時期壊滅的だったが、マナーはできるらしい。

「でも、おいしいよ。ジーニアスにも負けてない」
「そうですね・・・」

しいなとプレセアもロイドに同意する。それにむっとするジーニアス。反論しないのは、成長を感じる。
うむうむ、確かに。この三日近くは熟成したと思われるカレー。お貴族のゼロスが文句を言わないのだ。
その濃厚で、まろやか、ジューシーな味は推して知るべし。
そして、その横で。

「むしゃむしゃむしゃ」
何かカレーを皿ごと食ってる丸っこい謎生物が。コレットのお隣にいるのは、彼女の要望である。
この丸っこい謎生物、名をクレイアイドルと言う。ちなみに五人兄弟。私にはまったく長男だの次男だの見分けがつかん。

・・・って言うかですね、両親がどんな人か気になります。

クレイアイドルは、通せんぼしてた。通して欲しければカレーを食わせろ。
そんなわけで、小休止も含めカレーを食ってるんだが。
あ、ちなみに、鉱山でこの兄ちゃんとやらに会ったので、この子はその弟らしい。

ばりばりばり
いや、だから皿を食うなよ!
お前のにーちゃんも私のワイン、瓶ごと食ってたよな! 味わえよ、せめて(私の代わりに)!!

「・・・ごちそーさま」
私はお皿を置いて、手を合わせる。いや、お粗末様でした。うまかったっす。

「で、感想は?」
「んー、岩と大差ねーなー」
そりゃ珪素(ガラスの成分)と皿の味だ。

何かリーガルがちょっとがっかりしていたようだが、私が「おいしかったよ」と言うと嬉しそうだ。
・・・可愛いじゃないか(オイ)

「まー、約束だー。通すぞー」
「あ、そだ」
私は妙案を思いつき、クレイアイドルに聞いた。

「ねえ、ノームがどこにいるか知ってる?」
「おー。知ってるぞー」
おお、やはり。

「じゃあ、どこにいるか案内してくれる?」
「いいぞー」
私はみんなを見た。反応は上々である。

「んじゃーこっちだー」
間延びする口調で、クレイアイドルは私達を広場へ案内してくれた。そこには五人兄弟全員集合していた。
「じゃー、やるぞー」
何を?  と聞く暇もなく。クレイアイドル五人はどすん、とジャンプして飛び上がった。

そして、揺れる地面。

「ま、まさか・・・」
い、イヤな予感が!!
「じゃーなー」

ひゅううううぅぅぅぅぅぅぅ・・・

なああああああああっ!!?
ある意味では予想通り・・・・私達は、地面の底へ落ちた。そう、ノームのいる場所へと。




―――――――――――――――――――




「ぜー・・・ぜー・・・し、死ぬかと思った・・・」
「も、もう落ちるのはごめんだよ・・・」
似たような経験のあるしいなは冷や汗かきながらぼやいた。

そして、ここが一番広い場所なのだろう。開けた場所に、スコップ持ったモグラ(?)が。

丸っこい、頭には赤いドリル(?)をつけている。リボンに見えなくもない。
「こいつがノームか?」
「多分」
ロイドの問いかけに、私はちょい自信なさげに言う。

「ウンディーネとヴォルトが相対関係だったんだからノームの場合は・・・」
風属性のシルフだね。

「イフリートを同時に目覚めさせればマナの流れを分断できるのか!」
何でやねん
ずごっ、とロイドの脳天にチョップ。リフィルがぷりぷりと「シルフです!」と言った。

「まったく何度言えばわかるのかしら・・・」
頑張ってください。それしかありません。

「よー、やっと来たな!  待ちくたびれたぜ」
ノームはスコップを構え、えっへんと胸を張った。無駄に偉そうですね。

「わー、おっきなリボン、可愛いですね」
「・・・・リボンか、あれ?」
ノームの話も聞かず、コレットとロイドはのんびりとした会話をしている。
いや、多分あれは削岩機じゃないかと・・・ドリル・・・?(←何でだ)

しいなはノームの前に踊り出た。そして、契約しようとする。だが。
「ん、お前召喚術師だな? でもオレもうミトスと契約しちゃってるぞ。」
いや、しちゃってるぞって・・・。
何かクレイアイドルの喋り方と似てる。コイツの影響だろうか。微妙に愛らしいような憎たらしいような。

「またミトスか・・・もしかして、全部の精霊と契約してんの?」
「おう、してるぞ」
「うえ、マジですか!?」
んじゃ、いちいち誓いを立てねばならんのか。
しいながノームに気圧されながら(変な意味で)咳払いをして契約を望んだ。

「・・・こほん、我が名はしいな。ノームがミトスとの契約を破棄し、我と契約をする事を望む」
「おっまえ硬っ苦しい喋り方すんなぁ」
つっこむな。私も思ってたけどさ。

「だ、だってこう云う風にするように習ったんだよ!!」
しいなも答えないの。
何だよ、このボケつっこみわ。

「ふーん。まあいいや。じゃあちょっともんでやるからよ」
「うぃっす。よろしくー!」
何か無駄にテンションをあげて・・・戦闘!

「ロイド、地の反対属性は何かな?」
「へ?  えーと・・・」
「10秒以内に答えないと、今日の食事はロイドになりマース」
「ええっ。何かずるいぞ!」
「10、9、8、7・・・」
「わー!  えーとえーと・・・」
慌てるロイド。ちょっと意地悪してやれ。

「6・・・めんどいから中略・・・3、2・・・」
「って飛ばすなよ! えーと、氷だ!」
「ぶー、ハズレ!」
何で氷になるかな、キミ。さっき先生が答えを言ってたのに。

「ロイド、書き取りの宿題ね・・・」
「うげ!  やめてくれよ、先生ー!」
ロイドがうめく。そこへノームの攻撃。

「大地の力を思い知れ! グランドダッシャー!!」
「うわっ」
足元から、火山が噴火したような衝撃が走った。その威力は凄まじく、地震と間違う威力だ。

「いきなり上級とは怖いな・・・あい、ジーニアス。さっきの答えをよろしく」
「任せて!」
かっちこっちとジーニアスは剣玉を弄び詠唱する。
「悠久の時を廻る優しき風よ、我が前に集いて裂刃と成せ! サイクロン!!

ずざざざざああっ!!

どの辺が優しいのかサッパリわからん風が、ノームへと襲い掛かった。
「のわあああああっ!?」
くるくると、コマのようにノームは回った。

・・・オイオイ(呆れ)

「お前らずりぃーぞー。多勢でボコにしやがってよ。ミトスは1人でかかってきたんだぜー」
それはすごいな。
つか、それってただ仲間がいなかったのか、マゾプレイなのか・・・(コラ)
うわ、イヤな想像しちまったよ。

「はっはっは、だってこれ私達の誓いだもん。しいなだけが誓うんじゃないんだし」
それにノームはぽりぽりと頭をかいて。

「ちぇーっ、わかったよー。ほら、さっさと言えよー」
だから何でそんなに横柄なのかね、キミ。

「二つの世界が、お互いを犠牲にしなくてもいい世界を作るために、あんたの力を貸しとくれ」
しいなの声に答え、ノームはうなずく。

「んー、いいぞ。俺の力、姉ちゃんたちに貸してやる」
契約は完了した。証拠にしいなの手元には、真紅のルビーの指輪があった。

「で、次はどこ行くー?」
「それならフラノールだね。かなり寒いから、防寒しとくんだよ」
それに、びくっとゼロスが反応した。

「? どしたさ、ゼロス」
「いや・・・何でもねえ」
何だ、変なゼロス・・・。
ともかく、フラノールへ行きましょうか!



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