バレンタインのSS集です。ウル織、ザエイル、ノイネル、そして・・・。


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Do you know Valentine?


「ねえ、バレンタイン・・・って知ってる?」
「何だ、それは」
ぱくぱくと、織姫はウルキオラの持ってきたご飯を食べながら、そんなことを話した。
「えっとね、こっちじゃ2月14日に女の子が男の子に、チョコレート上げて、好きな気持ちを伝える日なんだよ」
「下らんな」
予想通りと言うか、何と言うか。
ウルキオラはまったく興味ない様子で一言で片付けた。この日に命を賭けている乙女もいるというのに。
ウルキオラは現実に淡い想いを告げられたら、きっと今のようにすげなく切り捨ててしまうのだろう。
「うーん、でもきっかけって大事だと思うんだけどなあ」
バレンタインということを理由に、ほんの少し勇気を出して告白する。
織姫はふとウルキオラを見た。彼に言いたいこと、こんな機会じゃないと言えないこと。そんなことがあった気がする。
「ウルキオラ」
「何だ、女」
「私、ウルキオラのこと、好きだから。ちゃんと名前で呼んで欲しいな」
その一言で、時は止まった。
「ウルキオラ?」
「下らん」
ウルキオラは突如立ち上がり、すたすたと部屋から出ようとする。
「ウルキオラー?」
「黙れ」
後ろからついてくるので、ただ一言、吐き捨てるかのように言う。

後日。
グリムジョーがウルキオラが目を開けているのに壁にぶつかるという、世にも珍しいものを発見する。


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Please please eat this chocolate!!


「兄貴、口開けて」
「・・・断る」
まったく可愛い弟がこんなおねだりしていると言うのに、僕の兄貴は強情だ。
「開けろ」
「・・・嫌だ」
「そう、こじ開けられるのが好きなんだ」
そうとわかれば話は早い。僕はがちゃがちゃと何か使えそうな器材を探す。
「あ、・・・やだ。道具使わないで」
この前の実験の恐怖を思い出したのか、兄貴は涙を目にたたえて僕の服の裾を掴んでおねだりした。
子供っぽい仕草が、僕の嗜虐心をそそる。
「じゃあ、口開けて」
唇に指を当て、僕は兄貴の口をこじ開けた。
兄貴は目を瞑って、おそるおそる、といった具合に口を開ける。
その唇を自分のと重ねてしまいたい衝動に駆られたが、そこは我慢した。
ほおり込むのは、甘いお菓子。
「・・・?」
「甘い?」
「・・・チョコ?」
「トリュフだよ。ナッツ入り。ブランデーとかウィスキーとか、お酒が入っているやつは嫌いって言ってただろ?」
僕より年上のくせに、兄貴の嗜好はどこかお子様くさい。
ちゅ、と音を立てて唇重ねて、口内を味わう。甘い。
「・・・甘い」
「当たり前だよ。チョコレートなんだから」
そう言って、また僕は兄貴にキスをした。


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Is the sweet thing good?


「・・・何やってんだ、お前」
「あら、ノイトラ」
ぼちゃん、と音を立てて、ネリエルはいちごを鍋の中にほおり込む。
それを見て、ノイトラはもう一度問いかけた。
「・・・何やってんだ」
「チョコフォンデュよ。イチゴに、バナナ、あとパンの欠片なんかを入れているの」
「自分のか」
「ええ、従属官の二人にはもうあげたから。材料があまったから、こうして自分で後始末しているの」
ネリエルは誰かのためにチョコレートを作っているのではなく、その事後処理をしているらしい。
「・・・・・・・・・」
「あげないわよ」
「バッ・・・! 誰がいるか、こんなクソ甘いもの!!」
先に逃げ道を塞いでおけば、面白いくらいにノイトラは反応した。
「・・・・・・」
甘いものは嫌いなのだろうか。
まあ、確かにノイトラはそういったものは嫌いなようだ。
「・・・じゃあ、これを」
「ああん?」
ノイトラに渡したのは、チョコ板だ。ただし、甘くないビタースイートである。
「それなら食べれるでしょう。ついでに、あなたの従属官のテスラにもあげたらどうなの?」
「けっ、誰がやるか」
ばり、ぼり、とノイトラは音を立ててチョコ板を食べ始める。
素直にチョコレートが欲しいなんて、ノイトラは言えない。ネリエルもノイトラに好意を持ってチョコレートを渡すことも有り得ない。


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Happy happy Valentine!!


こんこんこん、とノック三回。
一護は死ぬほど嫌そうな顔をして、カーテンを開ける。
どうせこの時間帯に窓からやって来る連中などろくでもないのだ。
しかし、やってきたのは一護の想像した人物ではなくて。
「一護、来てやったぞ」
満面の笑みで、窓を叩くのは一護よりもずっと長い年月を経た黒猫のような女性だった。
手にはケーキ屋でもらう箱。どうやら差し入れらしい。
「ふふふ、初心な一護にはわしからぷれぜんとじゃ」
「え、まさか夜一さんから、チョコ?」
くふふふ、と怪しい笑みを浮かべ、夜一は部屋の中に家主の許可なく入っていった。
「うむ。まあ、喜助の店からかっぱらって、少々作ってみた。どうじゃ、食うてみい。うまいぞ」
箱の中身はガトーショコラだ。二つあって、夜一はそれを掴み取り、一護の口に近づける。
はからずも、あーんされてしまい、一護は少し顔を赤くしつつ食べる。
「どうじゃ?」
「・・・うまい」
そうか! と子供のように喜ぶ夜一を見て、一護は微笑んだ。
「・・・夜一さん」
「何じゃ」
自分用に持ってきた、もう一つのガトーショコラに手をつけ、夜一は一護のベットの上にあぐらをかいた。
オイオイ、とか思ったけど、せっかくの贈り物をくれたのだから今日くらいは多めに見よう。
「・・・ありがと、な。その、妹以外からチョコもらったの始めてだからさ」
そのしおらしい一護に、夜一はふーむと考え込み、至極真面目な顔をして言った。
「・・・一護、おぬし、喜助などやめて、わしにせぬか?」
「え、ちょ、夜一さん!?」
喜助には勿体ないのう、なんて呟きながら、顔を赤くする一護をからかう夜一であった。


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あとがき
時期ネタゆえに、かなり殴り書きなSS集です。
何で最後が夜一さんと一護なのかと聞かれれば、この二人がNLの中で結構好きな部類に入るからです。
ぶっちゃけ一ルキ、一織より好きだったりする茨道。切実に同志募集中です(涙)
こんな調子でまた季節ネタをアップするので、どうかお楽しみに!



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