「ねえ、ノイトラ」
「何だ、俺は今、機嫌が悪い。ぶっ殺されたくなきゃ、近寄んじゃねえ」
「別に貴方に危害を加える気なんてないけれど。そう言うのなら、距離をとって聞くわ。それで構わない?」
「・・・好きにしろ」
「ええ、貴方の口からその言葉が聞けて、私はとても嬉しい。それで聞きたいのだけど」
「何だよ」
「私には兄弟というものがないのだけど。やはり弟にとって兄とは邪魔な存在なのかしら」
「ああ?」
「ザエルアポロ。兄のイールフォルトを随分と毛嫌いしているようだから」
「知るかよ。何で俺に聞く」
「ザエルアポロの従属官には意味のない問いかけでしょう?」
「・・・」
「かと言って、本人に聞くわけにもいかないわ」
「・・・グリムジョーに聞けばいいだろう」
「聞いたけれど、わからないと返されたのだから仕方ないわ」
(・・・アレと係わり合いになりたくなかったんだろうな、きっと)
「あなたは、弟のザエルアポロと親しいのでしょう。何か知っているかしら?」
「知らねえよ、知っていたとしてもどうしろってんだ。俺に何が出来る」
「期待してないわ、そんなこと。貴方に仲を取り持つなんて器用な真似、出来るわけない」
「喧嘩売ってんのか」
「世の中にはできることとできないことがあるの。私が貴方に好かれないようにね」
「・・・・・・・・・・・」
「こればかりはどうしようもないのは、貴方が一番わかっているはずよ」
「・・・ざけんなっ」
「?」
「何でもねえよ!」
「そう」
(ちくしょ!誰も嫌いだ何て言ってねえだろうが、このアマ!!)
「弟と、兄というのは、同じ親から生れ落ちたのに。なぜ、あんな風に憎みあうのかしら」
「・・・それはどうだろうな」
「?」
「あの馬鹿はどうしようもねえほど、馬鹿だからな。気付いてないだろ」
「何に?」
「どうやったら兄貴に追いつけるか、視界には入れるのか、
どうすればいいかわからねえから、兄貴に八つ当たりしてるんだろ」
「・・・それは、ザエルアポロがイールフォルトに好意的な感情を抱いているということ?」
「知らねえのか、愛と憎みは紙一重だとよ。まさにその体現者があの野郎ってことだ」
「そう・・・だからなのね」
「・・・・・・・・・」
(・・・たく、何で俺がこんな事を・・・)
「だとしたら、悲しいわね」
「何がだよ」
「傷つけられれば、その傷はどうなるのかしら。痕になって、また傷をつけて、それを繰り返すのかしら」
「・・・さあな」
「イールフォルトに同情するわ。愛し方を知らない子供に、愛されてしまったのね」
「・・・・・・・・・・」
「私に出来るとしたら、手を差し伸べることだけど・・・」
「っ、ンなことする必要ねえだろ!!」
「どうして」
「お偉い三番様が、たかだか従属官風情を気に追うなって意味だ。
お前にそんなことされても、気持ち悪いだけなんだよ!!」
「・・・それは貴方の場合、でしょう?別に貴方に手を差し伸べたいわけじゃないわ」
「余計なお世話っつってんだ!メスに同情される身にもなれ!!」
「・・・責められる理由になっていないわ。私が貴方に不可解な事をしたのなら、それを進言すれば私も納得する」
「っ・・・」
「貴方には関係ないでしょう。質問に答えてくれたのは感謝するけど、介入するのは筋違いだわ」
「・・・・・・・・・」
「目障りなのよ」
「・・・どこへ行く」
「せめてイールフォルトの怪我の手当てくらいはしてあげなければ。死んでしまうわ」
「・・・他のヤツラがするだろ」
「それじゃあ、遅いのよ」
「・・・・・・・・・・・」
(互いに、厄介な相手に気を取られたな、)
(なあ、ザエルアポロ)
(お前も、そうなんだろ?)
――愛しいのか、憎いのか、
それすらもわからなくて
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