「・・・ん」
すやすやと眠る兄貴は、黙っていれば美人だと思う。
正直、兄貴と僕はそこまで似ていないと思う。髪の色はもちろんのこと、性格もさほど似ているとは思えない。
何より、グリムジョーとつるむ姿が決定的だ。
「本当に、眠っていれば可愛いのに・・・」
兄貴は僕のベッドで眠っている。部屋に何となくやってきて、僕は実験中だったから待たせておいた。
待つ時間が退屈だったのか、兄貴は眠ってしまった。
「・・・兄貴」
「・・・んぅ・・・?」
僕が小さくその名前を呼ぶと、兄貴は身じろいた。
まるで子供みたいで可愛い。
「好き・・・」
兄貴の眠っている顔があんまりに可愛いから、ちゅ、と僕は音を立てて頬にキスをする。
「好きだよ、兄貴・・・」
「・・・ぅん」
今度は額にキスをする。
「愛してる」
「・・・・・・うぅん」
耳の間近で囁くと、兄貴はびくんと身体を揺らした。
「愛してるよ」
もう一度、愛の言葉を囁いて、僕は兄貴の白い首筋を舐めた。
白い肌の上には、青黒い血管が見えて、それをなぞるように舐めた。
「ひ、あぁんっ・・・!」
ついでに強く吸ってやる。兄貴はとうとう、声を抑え切れずに、大きく声を上げた。
「おはよう、兄貴」
「・・・っ、ザエルアポロ、何を・・・!?」
顔を真っ赤にし、涙目になった状態で、上目遣いという二連コンボで兄貴は言った。
可愛い。
僕はこみ上げる感情を優しく弄びながら、兄貴の頬をゆっくりと撫でる。
ああ、何でコイツの肌はこんなにも気持ちいいのか。そんなことを頭の片隅で考え、僕は兄貴の唇にキスをする。
「兄貴が狸寝入りしていたから、寝込みを襲ったんだよ」
「お、襲うって・・・っ!?」
兄貴は顔を真っ赤にして、抗議した。しかし、僕はそれにやれやれと肩をすくめる。
「あれぇ? 兄貴は僕は頬にちゅっ、てした時点で起きてたじゃないか。なのに寝たふりをしてたくせに?」
「う・・・」
それに対して兄貴は言葉を失う。眠ったふりをして、僕を脅かすとかそんな事を考えてたんだろう、きっと。
「期待、してたんじゃないの?」
「・・・・・・・・・バカ」
その言葉を最後に。
僕は目を瞑り、兄貴の唇にキスをする。
そして、今度は二人で寝ようねと、告げた。


春は恋の季節




戻る